1972年~ 掲載記事
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読売新聞 2007年10月7日
オンの才人 オフの達人
「深く音楽を見つめたい」熱烈なNYから八ヶ岳へ ピアニスト 田崎悦子さん
音楽の友 2007年7月号
Concert Reviews(4月19日東京文化会館)
田崎悦子「ピアノ大全集」シリーズ
第2夜「古典からドイツロマンへ」について
音楽の友 2007年1月号(抜粋)
いま、このピアニストたちを聴け!日本人編
チャレンジするヴェテランたち
大ヴェテランとして精力的な活動を続けてきた田崎悦子は、このたび、3年がけ3回の「田崎悦子ピアノ大全集」と銘打った新たな演奏会シリーズを開始した。一見物々しいようなタイトルだが、第1回の“バロックから古典へ”から最終回の“20世紀から21世紀まで”へと、シリーズ全体にわたってピアノ音楽史を俯瞰するような選曲がなされており、田崎自身がこれまでに弾いてきた大好きな作品の中に新たな発見を見出したいという態度で取り組むということなので、タイトルの看板に偽りなしである。
教育者としても多忙な彼女だが、多くの演奏家が教育者になると演奏活動が間遠になってしまう中、こうした大きな企画を敢行することに彼女の演奏家魂が感じられる。本当は教育者こそ演奏家としてのあるべき姿を自らが示すべきなのであり、それを実行している彼女の姿勢は範とすべきものがあるといえよう。
(寺西基之)
CHOPIN ショパン 2006年12月号
田崎悦子ピアノ大全集 第1夜~人生が、五感を震わせる音楽に~
田崎さんが、20代での渡米以来30年間のニューヨーク生活の中で、カザルスやゼルキン、ジョン・ケージ等々、今や音楽史を彩る巨匠達と音楽空間を共有した事実は、衆目の知るところだ。今回、その半生の中で、「恋人のような存在」だと語る作品をあつめた6回連続リサイタル「田崎悦子ピアノ大全集」は、バロックから21世紀までも網羅する、壮大な音楽史になった。
その第1回目の「バロックから古典へ」は、スカルラッティのソナタ抜粋に、モーツァルトの幻想曲K475とソナタK457、そしてバッハのパルティータ第4番。形式を尊重しつつも重なるモダンな響きは、まさに命そのものが奏でるよう。どの音楽からも、巨匠達の囁きに耳を傾け、また、グレン・グールドも弾いたという1925年製のヴィンテージ・スタインウェイと対話する姿が見えてくる。
田崎さんの根底に流れるのは、曲への<真摯さ>であり、同時に<いとおしさ>だ。音楽とは何か。演奏家とはどうあるべきか―。これらの演奏から、その答えが見えた気がする。
(今枝千秋)
音楽の友 2006年12月号
Concert Reviews(10月4日東京文化会館)
田崎悦子「ピアノ大全集」シリーズ
第1夜「バロックから古典へ」について
レコード芸術 2006年11月号
ピアノの歴史通覧も最終回
~ 新譜月評~
J.S.バッハ:パルティータ 第4番&第6番/J.S.BACH: Partita No.4 and No.6
W.A.モーツァルト:幻想曲 ハ短調 K.475/W.A.MOZART:FANTASY K.475
山梨日日新聞 2006年3月25日
清里から「生きた音楽」発信
ピアニスト 田崎悦子さん
音符の裏の心読み取る
想像力と感受性を育成
音楽の友 2005年1月号
バッハ・プロジェクト
音楽が技術に奉仕するのではなく、技術が音楽に奉仕するものだというあまりにも当然なことを認識させられた一夜。プログラムは「平均律クラヴィーア曲集」から4曲の「プレリュードとフーガ」、原田敬子委嘱作品「NACH BACH」、「パルティータ6番」。「平均律」は、各声部があるときはひとつひとつ明瞭なラインを描き、またあるときは交錯して素晴らしく立体的。嬰ハ短調のフーガなど絶品。
原田作品は「平均律」に因んだ24曲中の前半12曲。多彩な趣向を凝らした意欲作だが、凡庸な弾き手では真価は輝くまい。そこで冒頭の感想。長い自己研磨の成果と、真の音楽的教養を有する田崎悦子が演奏するから、バッハからもこのオマージュ作品からも、何かがありありと伝わってくるのだ。「パルティータ6番」も無類の面白さ。ピアノは1925年製のニューヨーク・スタインウェイだが、手が加えられているのかと思うほどの表現力。
(萩谷由喜子)
音楽の友 2003年6月号
”魂をゆるがす音楽”を伝えた
田崎悦子のマスタークラス
ピアノ・マスタークラス
ジョイ・オブ・ミュージック in 八ヶ岳
音楽現代 2003年9月号
イエスタディ・ワンスモア
田崎悦子が激動の青春時代を語り、曲目は当日のお楽しみの愛奏する小品を弾くという話題のコンサート。自室を模したらしい舞台上、まず田崎が「昔々、ある所に大変貧しい国がありました…」と自らの若き日について語りだす。続いてガーシュイン「三つの前奏曲」がガッと若々しい情熱も丸出しに弾き出され、随時60年代のアメリカクラッシク音楽界黄金時代を肌で知る田崎ならではの、興味深いトークを挟みながら、ブラームス/間奏曲と十八番のバルトークの小品を三曲、そしてリスト/ハンガリー狂詩曲第12番をホール中に鳴り響くようにダイナミックに弾いてのけた。
後半は黒のドレス姿といい、「夜会」という雰囲気の中、まず得意のドビュッシー/前奏曲集から3曲が弾かれると、佐藤敏直「八月の鎮魂」、ショパン4曲を挟み、最後は田崎の五大Bの青春の金字塔ビートルズ「イエスタディ」とバッハ/前奏曲が連続して演奏されたが、次第に照明が落ちると暗闇の中の終結へ。
(浅岡弘和)
CHOPIN ショパン 2002年
田崎悦子音楽監督のピアノセミナーJOY OF MUSIC ~田崎マジックがここに~
『JOY OF MUSIC』は、国際的に活躍するピアニスト田崎悦子が音楽監督を務めるピアノセミナーである。毎年春が息吹を取り戻す3月末に開催され、2006年には第5回を迎えるのだが、これを単なるレッスンと思ったら大間違い。1週間に及ぶセミナーには30年以上国際舞台で活躍を続けている音楽家田崎悦子の音楽的理念が凝縮され、さらに人生の高みへと昇華させるような世界でも類を見ない総合的かつ極上の音楽ライフが展開されるのだ。
まずロケーションが素晴らしい。会場となるのは山梨県清里高原に位置するプチホテル。周囲を深い木々に囲まれ、清冽な空気の中、隠れ家のように佇む瀟洒な洋館で受講生は研鑽に励むことになる。西洋音楽の基本は自然に対する感動、憧憬であり、時とともに刻々とと表情を変えていく自然は、音楽の大切なエレメントである。
セミナーの内容は、オープニングとファイナルのコンサート出演、個別のレッスンが主なものだが、このレッスンがすごい。田崎は受講生ひとりひとりの個性を見極め、伸長し、いつの間にか受講者本人も気付いていない才能が引き出されていく。明らかに変貌し開花していく表現力やイマジネーションに聴講生からもどよめきが起こる。だからファイナル・コンサートにおける受講者全員の、恐るべき成長ぶりに皆一様に驚かされるのだ。まさに『田崎マジック』!
そればかりではない。『音の万華鏡』というリスニング・ワークショップが開かれ、特別製のオーディオ機器を使用して音楽的な耳が鍛えられる。さらに毎晩のディナーも垂涎、受講生は音楽と食に共通する鮮烈な感性をストレートに肌に感じることだろう。そのディナーの後には全員参加のディスカッションが待っている。折々の話題について自由に語り合う、あまり日本では見かけない光景だがこれも表現のひとつ、コミュニケーションを図り、心象風景を言葉で表すことは音楽の発露にも通じる。他にも自然の中での散策や、近隣美術館での鑑賞など至れり尽くせりの上に、音楽的、人間的な成長が顕著な受講生には特別スカラシップとして費用免除の特典もある。
「音楽時計を50年前に戻したいのです。私が通っていた桐朋学園の創立時には、先生、生徒、父兄は一体になり炎のようなパッションが漲っていました。周りには自然があり、子供たちはみな心の豊かさを持っていたのです。そして私のマールボロ音楽祭での体験。
直接触れたカザルスやゼルキン、ホルショフスキーたちは『音楽のしもべ』という姿勢を崩さず、自己に向き合い、直接譜面だけから作曲家の魂を模索していました。それは人生に対する姿勢にも共通します。そういった精神から自ずと喜びが生まれ、練習や演奏が心から楽しくなってきます。セミナーではあらゆる要素から表現力を付けていきます。心を開くと、演奏を通して聴講生たちとの対話も生まれます。すべてが感動につながっていくのです」(田崎悦子)
(真嶋雄大)
音楽現代 2001年7月号
田崎悦子ピアノ・マラソン
バルトークの演奏に定評のある田崎悦子が5月から10月の間、三夜にわたり演奏会を催す。私はその第一夜を聴いた。
バルトーク「十四のバガデル」より抜粋した3曲が最初の曲目。私が待ちに待った田崎のバルトーク!絶品だったのは「ルバート」で、贅沢な時間のとり方、いわば音のない空間における音楽を見事に造成した。水を打ったように会場の空気も張りつめて、まさに「田崎ワールド」だ。プロコフィエフ「ソナタ 第6番」でも、田崎の重厚なパワーが炸裂した。全体的に鋭角的に仕上げられていたが、中でも第2楽章の、黒鍵上を駆け巡るアルペジオをスマートに弾きこなすあたりは、弾力性に富んだ技巧なくしては表出できない。
後半はドビュッシー「前奏曲集 第1章」。田崎のデリケートな音の世界は夢幻的であり、これ程に音楽の内側に引き寄せられるドビュッシーを私は聴いたことがない。敢えてリクエストするならば、世界中の音楽界を震撼させた彼女のバルトーク「ピアノ協奏曲」をぜひCD化して欲しい。
(道下京子)
朝日新聞 1997年4月24日
田崎悦子ピアノリサイタル 魅惑の着想 細心かつ大胆
その晩年にベートーヴェン、シューベルト、ブラームスは味わい深いピアノ曲を書いたが、それらを3回に分け、1回ひとり1曲ずつ弾くというのが田崎悦子のプラン。中堅の実力派らしい魅力ある着想で、その第1夜もそれにふさわしい、充実したものになった(22 日 上野の東京文化会館小ホール)。
彼女の音はよく吟味されて質感を帯び、充実して美しい。運びは周到で、細心にしてときに大胆。そして全体に音楽の内なる核心に迫ろうという意欲がにじむ。プログラムには音楽を求めて模索したここ十年を振り返る文章が載っていたが。演奏家の筆になるものとしては出色の小エッセーで、おのずと演奏の中身に見合う誠実な性格を見せていた。
ブラームスの「3つの間奏曲」は、冷気をたたえた音色で豊かな重量感のうちに弾き進み、そこに深々とした情感の呼吸を通わせて、老年の孤独と諦(あきら)めをにじませ、ブラームス晩年の心境に共感し、ひいてはうらやむ気持ちに誘う力があった。ベートーヴェンのソナタ・作品109 では第3楽章がいい。主題を滋味ふかく提示したあと、各変奏をその性格に寄り添って弾きこみ、とくに大詰めの第6変奏では長いトリルの上に高音域で歌われる主題をくっきり際立たせ、熱く息詰まる高潮に達していた。
ただ、第1、第2楽章が少し弾き急いだ感があり、音楽が十分に解放されなかったのは、ブラームスの第3曲と調性の上でスムーズにつながっていただけに惜しい。
とはいえ、これを帳消しにして余りあったのがシューベルトのソナタ・ハ短調(遺作)。ベートーヴェンにならおうとして自分の資質と衝突を起こし、まとめにくいこの大曲に、田崎は説得力ある太い道を通し、全曲、気迫こもるシューベルトとした。なかでも第4楽章は乗りに乗った快演。飛びはねる第1主題に託した躍動感、ギャロップふうの第2主題にこめたマジカルなリズムの魅力はぞくぞくするほどで、音楽はパワーとスピードのなかで激しく燃え上がり、3曲にわたる静から動への推移に大きなピリオドを打った。そして礼奏、即興曲・変ト長調でシューベルト本来の超越的リリシズムで耳なおし?をしたのもよかった。
中河原理(音楽評論家)
1972年
ニューヨーク・タイムズ
パッションとパワー、美しい音色、人々の心に浸透する音楽……。
シカゴ・トリビューン
深く刻まれたダイヤモンドのように光る音、躍動するリズム、果てしなく広がるファンタジー、そしてデリケートな歌心、我々は Etsko Tazaki の名を何度も聞くであろう!
ルツェルン音楽祭
どんな瞬間にも作曲家の音の内側に深く入り込み、その何かをさぐりあてようとする謙虚さと、それをあらゆる方法で表すことの出来る技術を備えた本格的アーティスト。
ミュージカル・アメリカ
豹に見つめられた時のように身動きできなくなる程、聞く者をつかんではなさない演奏。