音楽の友2005年1月号掲載

バッハ・プロジェクト

音楽が技術に奉仕するのではなく、技術が音楽に奉仕するものだというあまりにも当然なことを認識させられた一夜。プログラムは「平均律クラヴィーア曲集」から4曲の「プレリュードとフーガ」、原田敬子委嘱作品「NACH BACH」、「パルティータ6番」。「平均律」は、各声部があるときはひとつひとつ明瞭なラインを描き、またあるときは交錯して素晴らしく立体的。嬰ハ短調のフーガなど絶品。

原田作品は「平均律」に因んだ24曲中の前半12曲。多彩な趣向を凝らした意欲作だが、凡庸な弾き手では真価は輝くまい。そこで冒頭の感想。長い自己研磨の成果と、真の音楽的教養を有する田崎悦子が演奏するから、バッハからもこのオマージュ作品からも、何かがありありと伝わってくるのだ。「パルティータ6番」も無類の面白さ。ピアノは1925年製のニューヨーク・スタインウェイだが、手が加えられているのかと思うほどの表現力。

(萩谷由喜子) 

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