月刊 CHOPIN ショパン 2002

田崎悦子音楽監督のピアノセミナー

JOY OF MUSIC ~田崎マジックがここに~

『JOY OF MUSIC』は、国際的に活躍するピアニスト田崎悦子が音楽監督を務めるピアノセミナーである。毎年春が息吹を取り戻す3月末に開催され、2006年には第5回を迎えるのだが、これを単なるレッスンと思ったら大間違い。1週間に及ぶセミナーには30年以上国際舞台で活躍を続けている音楽家田崎悦子の音楽的理念が凝縮され、さらに人生の高みへと昇華させるような世界でも類を見ない総合的かつ極上の音楽ライフが展開されるのだ。

まずロケーションが素晴らしい。会場となるのは山梨県清里高原に位置するプチホテル。周囲を深い木々に囲まれ、清冽な空気の中、隠れ家のように佇む瀟洒な洋館で受講生は研鑽に励むことになる。西洋音楽の基本は自然に対する感動、憧憬であり、時とともに刻々とと表情を変えていく自然は、音楽の大切なエレメントである。

セミナーの内容は、オープニングとファイナルのコンサート出演、個別のレッスンが主なものだが、このレッスンがすごい。田崎は受講生ひとりひとりの個性を見極め、伸長し、いつの間にか受講者本人も気付いていない才能が引き出されていく。明らかに変貌し開花していく表現力やイマジネーションに聴講生からもどよめきが起こる。だからファイナル・コンサートにおける受講者全員の、恐るべき成長ぶりに皆一様に驚かされるのだ。まさに『田崎マジック』!

そればかりではない。『音の万華鏡』というリスニング・ワークショップが開かれ、特別製のオーディオ機器を使用して音楽的な耳が鍛えられる。さらに毎晩のディナーも垂涎、受講生は音楽と食に共通する鮮烈な感性をストレートに肌に感じることだろう。そのディナーの後には全員参加のディスカッションが待っている。折々の話題について自由に語り合う、あまり日本では見かけない光景だがこれも表現のひとつ、コミュニケーションを図り、心象風景を言葉で表すことは音楽の発露にも通じる。他にも自然の中での散策や、近隣美術館での鑑賞など至れり尽くせりの上に、音楽的、人間的な成長が顕著な受講生には特別スカラシップとして費用免除の特典もある。

「音楽時計を50年前に戻したいのです。私が通っていた桐朋学園の創立時には、先生、生徒、父兄は一体になり炎のようなパッションが漲っていました。周りには自然があり、子供たちはみな心の豊かさを持っていたのです。そして私のマールボロ音楽祭での体験。
直接触れたカザルスやゼルキン、ホルショフスキーたちは『音楽のしもべ』という姿勢を崩さず、自己に向き合い、直接譜面だけから作曲家の魂を模索していました。それは人生に対する姿勢にも共通します。そういった精神から自ずと喜びが生まれ、練習や演奏が心から楽しくなってきます。セミナーではあらゆる要素から表現力を付けていきます。

心を開くと、演奏を通して聴講生たちとの対話も生まれます。すべてが感動につながっていくのです」(田崎悦子)

(真嶋雄大) 

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