音楽現代 2001年7月号

田崎悦子ピアノ・マラソン

バルトークの演奏に定評のある田崎悦子が5月から10月の間、三夜にわたり演奏会を催す。私はその第一夜を聴いた。

バルトーク「十四のバガデル」より抜粋した3曲が最初の曲目。私が待ちに待った田崎のバルトーク!絶品だったのは「ルバート」で、贅沢な時間のとり方、いわば音のない空間における音楽を見事に造成した。水を打ったように会場の空気も張りつめて、まさに「田崎ワールド」だ。プロコフィエフ「ソナタ 第6番」でも、田崎の重厚なパワーが炸裂した。全体的に鋭角的に仕上げられていたが、中でも第2楽章の、黒鍵上を駆け巡るアルペジオをスマートに弾きこなすあたりは、弾力性に富んだ技巧なくしては表出できない。

後半はドビュッシー「前奏曲集 第1章」。田崎のデリケートな音の世界は夢幻的であり、これ程に音楽の内側に引き寄せられるドビュッシーを私は聴いたことがない。敢えてリクエストするならば、世界中の音楽界を震撼させた彼女のバルトーク「ピアノ協奏曲」をぜひCD化して欲しい。

(道下京子) 

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